THE SARTORIALIST X

 
疲れた時にエネルギーをくれるビタミン本

スケジュール管理が大の苦手だ。個人事業主になってからついつい仕事を入れすぎてしまい、(今月、私はいつ休むんだろう・・)と自分にツッコミを入れることもしばしば。仕事以外の要素でどんな時間を確保しておくことが必要か、時に痛い思いもしながら、少しずつ学んでいる。
 
コーチングやワークショップで人と関わる仕事は、私という資源を世の中に還元するために今のところ一番、実効性のある方法だと思っているので、仕事への不満は一切ないけれど、働きすぎて自分のための時間がないと、やはり内側のエネルギーが少しずつ枯れていってしまう。

(疲れてるな・・・)と燃料切れを自覚する時、よく手にとってエネルギーを貰うのが ’THE SARTORIALIST X’ だ。写真家のスコット・シューマンが、世界中のあらゆる街で撮影したストリート・スナップを集めたこの本は、ひとりひとりが唯一無二の個性を持ち、その人だけの輝きを放つ存在なのだと言うことを、まざまざと思い出させてくれる。

明らかにファッション関係者とわかる人物のスタイリッシュな写真も沢山あるが、普通の人の生活の一瞬を鋭く、瑞々しく切り取った写真もあって、私はそういう写真が特に好きだ。何も語らずとも「私はここに存在している」と全身の毛穴からエネルギーが伝い出て、匂いさえ漂ってくるような、他の誰とも間違えようのない「個」のくっきりした存在感。表現しようと思っていようがいまいが、人はどうしようもなく、その人だけの存在感を常にだだ漏れに表現しちゃっているのだと感じて、嬉しくなってくる。

どうせ表現されちゃうんだから、やりたいように、思いっきりやってみたら?その方がずっと楽しいよ!
人生なんて、表現したもん勝ち、楽しんだもの勝ちだよ。

’THE SARTORIALIST X’はそんな風に、読む人を楽しく、けしかけてくる。

カラフルなショットの数々と同じぐらい惹きつけられるのが、スコット・シューマンのプロ魂だ。人を魅了してやまない写真を、これほど膨大に撮影し続ける情熱や、妥協を許さないプロとしてのこだわりの片鱗が、時折さし挟まれる文章からうかがえる。

ストリート写真の撮影でかなり好きなことのひとつに、成功する望みも薄いのに時間ばかりかかることが多く、忍耐力を要するということがある。しかし、どんな瞬間であっても、写真家人生においてベストな写真を撮影できたという経験をすると、ほとんどの写真家はその狩りを止めることができなくなってしまうものなのだ(p.264)

「狩りを止めることができなくなってしまう」感覚は、私もわかる。私の場合はコーチングや人間探求が、それにあたる。こんなしんどいこと、どうしてやっているのだろう、もう投げ出したい・・・と思っていても、セッションでクライアントさんの素晴らしい魂に触れると、疲れも吹っ飛んでしまう。

妥協せず、謙虚に、自分にできることを積み重ねていこう。
できればもう少し、自己表現を楽しみながら。